本当の三年間 第04話 漠然呆然だけど最高

公開日: 2005/07/05

 2002年、7月。
 俺達は中学初の夏休みを迎えた。小学校時代はただダラダラと、漠然と過ごしていた日々だったが、今年からは違う。部活が中心となってくる。この長い休み期間中に早起きはキツいと思うかも知れないが、大好きなテニスをしに行くと思えばむしろ楽しみでさえあった。そして、その予想通りに部活の日々は楽しかった。
 そんなある日、テニス部の集まりで、部員一同は国語科室に集合した。然し、顧問がなかなか来ない。当然の如く、国語科室は部員の談話室へと化した。

「上原『アレ?川Bって何人だっけ?』
川崎『俺はインディアンだよ』
高橋『ハハハ』
川崎『あ、インディアンって言えばアンパンマンって粒餡だっけ?漉し餡だったっけ?』
武田『インディアンとアンパンマンの関連性が分からないけど、ってゆーかどっちでもよくねぇ?』
小松『確かに』
川崎『いや、これは重要なことだぞ?仮にもアンパンマンマニアである俺がそんなことを忘れるなんてッ』
全員『アンパンマンマニアなのかよッ!!』
武田『でもバタコさんってめっちゃ肩強くねぇ?あれ絶対メジャーリーガーだよ』
川崎『いや、実はそもそもジャムおじさんは本当はDr.ジャムって言ってアンパンマンという人造人間を作って世界征服しようと企んでいるんだよ。バタコさんはその助手なんだ!!』
全員『えええッッッ!!??』
・・・・・・・・」

 この会話は、卒業した後、部屋から出てきたメモに記されてあった。このメモを見なければ、恐らく忘れていたような、意味不明(本当に意味不明)な会話だ。
 そんな会話も、楽しかった。全てが、楽しかった。こんな一時はもう二度とないだろう。そう言い切れてしまうところが、嬉しくもあり、寂しくもある。
 でも、この頃の俺達はそんなことは知らなかった、そう、だから何も考えずに行動していた。漠然と、ただ呆然と一日一日を平凡に、無意味に、単調に、でも充実して過ごしていた。昨日のことなんて忘れ、目の前にある今日だけを生きていた。小賢しい計算なんてしないで、今だけを生きていた。そして、そのとき、きっと俺達は何も考えずに言っていたんだろう。
 
 
 
「今日も暑っちいなぁ」って。
 
 
 
 
 
[第04話、終]