本当の三年間 第05話 はじめての・・・

公開日: 2005/09/08

 初めての校外行事、と言えば、確か1年の2学期のいつ頃かにあった校外学習ではないだろうか?確か6人グループ(男子3人、女子3人)に分かれ、それぞれ適当な場所(ある程度何かを学習するのに適した場所、例えば遊園地などはタブー)を設定し、そこに行ってレポートするという行事だ(正直、記憶が曖昧なのだが)。
 今思えば、俺の班は「なんで俺達組んでたんだろう~」と言いたくなるようなメンバー編成だ。このグループもどうやって決めたのか、くじ引きか、それとも好きなもの同士か。思い出せない。でも、ただ一つ言えるのは、微妙な班だった、ということだ。
 まず、朝9時に一年生は体育館に集合した。当然ながら、みんな私服である。ここでみんなのファッションセンスが分かってしまう訳である。ジローというパシリキャラは、全身黒タイツだったということを聞いたが、如何せん記憶がはっきりしない。実は俺も何だかパジャマみたいなとんでもない服装で行ったらしいのだが、本当に覚えていない。昔の俺は、とことん服装に無頓着だった(もっとも、今もだが)。
 さて、そして俺達の班は出発した。京浜急行線などを乗り継ぎ、江ノ島駅に着いた。そう、俺達は訪問場所を江ノ島水族館に設定したのだ。理由は、勿論忘れた。
 人間、いきなりの体験はフラッシュのように良く覚えているのだが、俺もこのとき、そんな体験をしてしまった。コンビニで、軽い食事を買ったときである。俺は買ったピザマンをみんなと歩きながら食べていた。すると、そのピザマンめがけてトビが空中から急降下して飛んできたのだ。俺はそこで反射的にピザマンを握りしめピザマンを守り、何を思ったか捨てればいいものを「早く食わないと奴に食われる!」などと考えてしまい急いで無理矢理口にピザマンを詰め込んだのだ。馬鹿だ。正真正銘の馬鹿だ。鳥に病原菌が付いてる可能性もあるのに。一歩間違えば、死ぬところだ。
 そんな事件にもめげず、俺達は水族館へ入り・・・そっからは学習コーナーになってしまうので、省略する。
 そして、終わった後、俺達はどうせだからと近くの海を散歩することになった。そこで女子達は靴を脱ぎ海辺で遊び、男子達は浜辺で貝殻を拾うという「逆だろ!!」とツッコミたくなるようなことをしていた。ツッコめば良かった。今、書きながら、少し後悔している。
 その後は、きわめて普通に学校に帰り、普通に帰宅した。
 
 今思う。この一年生前半の体験、これらは(少なくとも俺の場合)最も中身のない事件ばっかりだった。そして、それで満足していた。だけれども、今の俺は違う。常に何かを欲している。だからいつも不満だらけで、満たされないまま今(これを書いているときで言えば高校時代、きっとこれはもっと続くんだろう。そう、永遠に)を過ごしている。
 あのときのようなままでいられたら、人は何て幸せだったんだろう。計算しないで、考えさえしないで、純粋なまま居られた。もし、みんながそのままだったら、世界平和だって夢じゃないのに。でも、人は変わっていく。不思議だ。そして、年を重ねる事に、こんなバカを今でもしている奴らを「くだらない」と言う。でも、じゃあバカしない人生って、くだらなくないんだろうか。
 絶対に違う。そんな人生こそ、本当にくだらないと思う。だから俺は楽しむ。本能のままに。くだらないことをやる。
 それが結果として、くだらなくないと思うから。
 
 
 
 
 
[第05話、終]