本当の三年間 第10話 ようこそB組へ

公開日: 2008/03/18

 進級。新しい出会い。それは同時に、人間関係の再編成をも意味している。
 春恒例のクラス替えにより、俺は今までのA組の仲間達とは離れ、B組という新境地に立つことになった。もっとも、大した不安は無かった。そもそも、会おうと思えば壁一つ跨いだ隣の教室に彼らは居るのだ。困るようなことは何一つとして存在しない。
 只、そう強がったものの、やはり知らない者に囲まれるのは余り慣れない。いくら一年の時多少知名度を上げたとしても、人見知りという本質、それは全く変わっていなかった。結局、初日は元A組とテニス部の奴らとしか話せなかった気がする。
 いや、違う。確かもう一人話した奴が居た。
 清水光だ。
 彼とは出席番号順に着席した際に隣の席になった。見たことある奴だとは分かっていたが、それだけなので、特に意識はしていなかった。その時
「おお、武雄と同じクラスかぁ!!」
と言われた。あまりに突然だった。
「ま、これからよろしくな、武雄!」
俺は戸惑った。
 お前、誰だよ。お前は俺のこと知ってるらしいが、残念なことに俺はお前のことは何一つ知らん。少しは自己紹介したらどうだ?名前ぐらい教えろ名前くらい。
 そんなこと思いながら、俺は適当な相槌で済ました。彼とは後に同じ塾に通うことになるとは、このときは知るよしもない。
 
 結局、戸惑いつつも、俺は少しずつこのクラスの色に染まってゆく。そして、「所謂グループに所属しない」という俺のスタイル(当時の俺にそんな意識はないし、故に俺にそんな記憶はない。これは後に同窓会で友人に言われたことだ。)は、少しずつ限界と寂しさに直面した。事実、確かに俺は昼休みに一人で居ることが多いとは言わないが、少なくはなかった気がする。そんな中、B組内である「部活」が発足し、その事態は多少良い方向に向かうのだが、それは又別の話だ。
 兎にも角にも、新しい一年が始まる。そして人生で恐らく最も、最も暇で暇で暇な一年が、スタートした。
 
 
 
 
 
[第10話、終]