本当の三年間 第11話 愛しのあの娘、ベスト10

公開日: 2008/03/18

 クラス替えを期に、交友関係は爆発的に広がった。元々、廊下ですれ違う程度の仲の人達とも会話をし、名前だけでしか知らなかった「有名人」とも出会い、気が付けば、世界は狭くなっていた。元々一学年三クラスしかない学校だ。全員と知り合うことだって全く不可能、不自然ではない。というより、恐らくこの学年全員がそうだったのではないだろうか。もっとも、今では「アレ?誰だっけ?」と言ってしまいそうになる元同級生が何名もいることも事実だが(俺がそう思うと言うことは、あちらも俺のことをきっと忘れていることだろう。一時でも覚えて貰えたことに、感謝感謝)。
 さて、話は少し戻るが、一年の後半頃になると、俺は良く学校帰りに友人達と共に呉の家に遊びに行っていた(以下、彼のあだ名に則し、ごちゃんと記す)。ごちゃん家は学校からすぐの場所にあり、それ故みんなは良くそこへ行き、だべったりしていた。ある日(確か一年の12月頃だったと記憶している。)、いつものようにみんなでごちゃん家に集結したとき、誰が言い出したか、「学年で一番カワイイ人は誰か投票」をやることになった。ルールは無記名投票の形式で
・全員にメモ用紙を配る。
・一人10票を持ち票とする。
・その持ち票を自分の投票したい人に振り分ける。(振り分け方は自由)
・後にごちゃんが責任を持って開票、集計する。
というものだった。先程言った「有名人」とは、何を隠そう、このランキングに入った人が殆どだ。ちなみに俺は、当時好きだった人に10票全てを投票した(前回も似たようなことを書いたが、本当にこのとき好きだったのか、はっきりしない。記憶がどうもごちゃごちゃになっている。)。その力もあってか、その彼女はランキング第1位に輝いた。
 今思い返すと集まった個人によるバラツキが非常に大きい投票だが、当時の俺にはどうやら非常に貴重なデータに思われたらしく、いつも使わない生徒手帳のメモ欄に開票結果を写していた。他人の恋愛やら何やらを知りたく、又、ちょっかいを出したい年頃だったのだ。
 勿論、繰り返し言っているように俺にだって好きな人は居たが、それは本当に好きだったのか。どうも容姿だけで選んだ感がしてならない。もしかしたら、「面食い」という言葉が存在する以上、それは決して異常ではないのだろうか。いや、だとすれば、好きという感情と性欲の区別が、俺にはとても分からない。正直、今でも分からない。性欲を綺麗に、他人に相談し易く、そして、自身を美化するためにそのような人工的感情にすり替えているようにしか、俺には見えない。だから、ことある事にやれオナニーやら何やらの下ネタを話す人は理解できるし、むしろ好感すら持てる(TPOは大前提だ)一方、愛やら恋やらを真顔で真剣に語っている(「騙っている」だと俺は捉えている)人は理解しがたいし、故に気持ち悪いと感じてしまう。
 話が逸れた。とにかく、何が言いたいかというと、その「有名人」の内の一人と、俺は付き合うこととなったのだ。その経緯を記そうと思ったのだが、ここには余りにスペースが足りない。
 
 
 
 
 
[第11話、続]